股関節の奥が詰まる・痛む「FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)」とは?鍼灸とリハビリで変わる股関節の未来
- クゴリハ鍼灸院
- 5月21日
- 読了時間: 5分
「あぐらをかくと股関節の付け根がズキッと痛む」 「車から降りるときや、靴下を履くときに股関節の奥が詰まる感じがする」 「サッカーや格闘技で足を大きく動かしたあと、鼠径部(そけいぶ)のあたりがじわじわ痛む」
こうした症状に心当たりはありませんか?
整形外科を受診しても「骨には異常がないから様子を見ましょう」と言われたり、単なる筋肉痛だと思って見過ごされたりしがちなこの痛み。実は近年、アスリートや活動的な若い世代、そして中高年女性の股関節痛の原因として非常に注目されている「FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)」という病態かもしれません。
今回は、このFAIの仕組みと、私たちがなぜ「鍼灸治療」と「リハビリ(運動療法)」を組み合わせてアプローチするのか、その理由を分かりやすく解説します。
そもそも「FAI」ってどんな状態?
FAIを日本語に直すと、「大腿骨寛骨臼(だいたいこつかんこつきゅう)インピンジメント」といいます。少し難しい名前ですが、要するに「股関節の骨同士がスムーズに動かず、ガツガツと衝突(インピンジメント)を起こしている状態」のことです。
股関節は、太ももの骨の先端にある丸い「大腿骨頭(だいたいこっとう)」が、骨盤の受け皿である「寛骨臼(かんこつきゅう)」にすっぽりはまることで、自由自在に動く構造をしています。
通常の形状であればぶつかることはありませんが、骨の形にわずかな「出っ張り」や「かぶりが深い」といった個体差(バリエーション)があると、股関節を深く曲げたり、内側にひねったりしたときに骨同士がガツンと衝突してしまいます。
この衝突が繰り返されると、骨と骨の間でクッションの役割をしている「関節唇(かんせつしん)」という軟骨組織が傷つき、慢性的な痛みを引き起こすのです。

FAIの3つのタイプ
骨の形状によって、主に3つのタイプに分かれます。
カム(Cam)タイプ: 太ももの骨側に「出っ張り」がある。20〜30代の若い男性アスリートに多い。
ピンサー(Pincer)タイプ: 骨盤側の受け皿が「深すぎる」。30〜40代の女性に多い。
混合(Mixed)タイプ: 上記の両方の要素を持っている。実はこのタイプが最も多いと言われています。
骨の形が原因なら、手技や鍼灸では治らないの?
ここで一つの疑問が浮かびます。 「骨の形が原因なら、形を変えない限り治らないのでは?」
結論から言うと、骨の形そのものを鍼や整体で変えることはできません。しかし、「痛み」をなくし、ぶつかりにくくすることは十分に可能です。
実は、画像診断で「FAIの骨の形」をしていても、まったく痛みを感じずに第一線で活躍しているアスリートはたくさんいます。つまり、「骨の形状異常=痛みの原因」とは限らないのです。
骨の形に少しクセがあっても、股関節の周りの筋肉が柔らかく、正しい位置で動かせていれば、衝突は最小限に抑えられます。逆に、周囲の筋肉が硬くなって股関節の動きがズレてしまうと、衝突が頻発して激しい痛み(機能不全)に繋がります。
だからこそ、骨を削る手術を検討する前に、筋肉や動きを整える「保存療法(リハビリや鍼灸)」が第一選択となるのです。
FAIに対する「鍼灸治療」の具体的な役割
当院では、FAIによる股関節痛に対して、鍼灸治療と運動療法をシームレスに組み合わせた施術を行っています。鍼灸が担うのは、主に以下の3つの役割です。
1. 衝突を助長する「局所の筋肉の緊張」を解き放つ
股関節がスムーズに回らなくなると、周辺の筋肉が過剰に緊張してディフェンス(防御収縮)に入ります。特に、股関節の前側を支える腸腰筋(ちょうようきん)や内転筋群、後ろ側で大腿骨をコントロールする大殿筋や深層外旋六筋がガチガチに硬くなると、大腿骨頭が正しい位置からズレてしまい、さらに衝突を悪化させる悪循環に陥ります。
鍼治療は、マッサージでは届かない骨盤の奥深くにある筋肉(腸腰筋など)や、関節包の近くにダイレクトにアプローチできるため、筋肉の過緊張を迅速に緩め、股関節のインサイドのスペースを広げることができます。
2. 深部の「慢性炎症」と「神経性の痛み」を鎮める
骨同士の衝突によって、関節唇や関節包(関節を包む袋)には微細な傷と炎症が起きています。 鍼灸刺激は、痛みを脳に伝える神経の興奮を抑え、局所の血流を劇的に改善します。血流が良くなることで、炎症を修復するための栄養や酸素がたっぷり運ばれ、長引く重だるい痛みを早期に引き算していくことができます。
3. 反射的な「筋出力の低下(サボり筋)」を防ぐ
痛みがあると、脳は防衛反応として「これ以上動かすな」という命令を出し、股関節を支える重要な筋肉(中殿筋など)のスイッチをオフにしてしまいます。鍼刺激は、この神経的なブレーキを解除し、筋肉が本来の力を発揮しやすい状態(促通)に戻すスイッチの役割も果たします。
鍼で痛みを引かせた後の「リハビリ(運動療法)」
痛みが軽くなったら、そこからが本当のスタートです。再びぶつからない股関節を作るために、リハビリを行います。
可動域の再獲得: 鍼で緩んだ筋肉の柔軟性を定着させ、骨がぶつからない安全な軌道(アライメント)で股関節を動かす練習をします。
動的安定性の向上: お尻の横にある「中殿筋」や、体幹(インナーマッスル)を鍛え、動いたときに骨盤がブレないようにホールドする力を養います。
動作の学習: 股関節を「深く曲げながら内側にひねる」という、FAIが最も嫌う動作(FADIRポジション)を日常生活やスポーツのフォームから排除するための動作指導を行います。
将来の「変形性股関節症」を予防するために
FAIによる骨の衝突や軟骨の微細な損傷を「たかが股関節痛」と放置してしまうと、何年、何十年という時間をかけて軟骨がすり減り、将来的に変形性股関節症へと進行してしまうリスクが高まることが分かっています。
「まだ若いから」「動かなければ痛くないから」と痛みを誤魔化すのではなく、早めに適切なアプローチをすることが、一生自分の足で歩き続けるための「関節の寿命」を延ばすことに繋がります。
股関節の詰まり感がずっと抜けない
どこに行っても「様子見」と言われて困っている
そのような方は、ぜひ一度当院にご相談ください。解剖学的な視点に基づいた鍼灸とリハビリで、あなたの股関節のスムーズな動きを取り戻すお手伝いをいたします。
.png)



コメント