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脳血管障害・脊髄損傷後の「筋緊張異常」に対する鍼灸治療の役割

  • クゴリハ鍼灸院
  • 2025年12月23日
  • 読了時間: 3分
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脳卒中や脊髄損傷の後遺症として多くの方が直面する、手足のこわばりや勝手に力が入ってしまう「痙縮(けいしゅく)」。 リハビリテーションの現場において、この筋緊張のコントロールは極めて重要な課題です。今回は、最新の医学的知見(エビデンス)に基づき、鍼灸治療がどのように中枢神経疾患の回復をサポートするのかを解説いたします。


1. なぜ「勝手に筋肉が固くなる」のか

中枢神経(脳や脊髄)が損傷を受けると、本来脳から発せられる「筋肉を緩めなさい」という抑制信号が途絶えてしまいます。すると、脊髄レベルでの反射が過剰に強まり、自分の意志とは無関係に筋肉が持続的に収縮してしまいます。これが筋緊張亢進、いわゆる痙縮のメカニズムです。


2. 鍼灸介入による神経生理学的メカニズム

鍼刺激がなぜ中枢性の麻痺に寄与するのか。そこには主に3つの生理学的機序が関与しています。

① 脊髄反射回路の調整(相反抑制とIb抑制)

固くなっている筋肉(主動作筋)の反対側の筋肉(拮抗筋)に鍼刺激、特に低周波の電気鍼(電鍼)を行うことで、脊髄レベルでの「相反抑制」を誘発します。これにより、過緊張を起こしている筋肉へ「緩め」という信号を間接的に送ることが可能です。また、腱への刺激はIb抑制を介して、その筋肉自体の過度な収縮を鎮める効果も期待できます。

② ゲートコントロール理論と下行性抑制系の賦活

持続的な筋緊張は二次的な痛みを引き起こし、その痛みがさらに緊張を強めるという悪循環(痛みの悪循環)を生みます。鍼刺激は、脊髄後角での痛み信号の遮断(ゲートコントロール)や、脳内からの内因性オピオイドの放出を促すことで、この循環を断ち切ります。

③ 脳の可塑性(かそせい)へのアプローチ

近年の機能的MRI(fMRI)を用いた研究では、末梢(手足)への適切な鍼刺激が、脳の体性感覚野や運動関連領域を活性化させることが示されています。適切な感覚入力を繰り返すことは、ダメージを受けた脳ネットワークの再構築を助け、運動機能の回復を後押しします。


3. エビデンスに基づいた併用療法の重要性

コクランレビューをはじめとする大規模なメタアナリシスにおいても、**「標準的なリハビリテーションに鍼治療を併用することで、運動機能および日常生活動作(ADL)の改善効率が高まる」**ことが示唆されています。

鍼灸は単独で麻痺を完治させる魔法ではありません。しかし、以下のような役割において、リハビリテーションの極めて強力な「パートナー」となります。

  • リハビリの「質」の向上: 鍼で筋緊張を一時的に緩和(ボツリヌス療法と似た機序の活用)した直後に訓練を行うことで、より正しい運動パターンの学習が可能になります。

  • 副作用の少なさ: 全身性の筋弛緩薬で見られるような眠気や脱力感を伴わずに、局所的な筋緊張緩和を狙えます。


4. 私が大切にしていること

臨床において私たちが目指すのは、単に針を刺すことではありません。患者様一人ひとりの麻痺のステージ、筋緊張のパターン(屈曲共同運動など)を解剖学的に分析し、最適な部位・周波数・深さを選択する「オーダーメイドの介入」です。


リハビリテーション科の医師や理学療法士・作業療法士の皆様とも連携し、多角的な視点から患者様のQOL(生活の質)向上に寄与することが、現代の鍼灸師に求められる役割だと確信しています。


おわりに

「これ以上の回復は難しい」と言われた後でも、筋肉を緩め、動かしやすい環境を整えることで、生活の利便性が変わるケースは多々あります。 当院では、科学的な根拠に基づいたアプローチで、皆様の「もっと動きたい」という想いをサポートいたします。


【ご相談・お問い合わせ】 現在のご状況やリハビリの進捗に合わせて、最適なプランをご提案します。お気軽にご相談ください。

 
 
 

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