パーキンソン病の鍼灸治療について
- クゴリハ鍼灸院
- 9月6日
- 読了時間: 4分

パーキンソン病に対する鍼灸治療について、その効果、作用機序、具体的な治療法について解説します。
1. 鍼灸治療の効果と臨床研究
パーキンソン病は完治が難しい進行性の疾患ですが、鍼灸治療は症状の緩和や生活の質の向上に有効であると報告されています。複数の臨床研究で、以下のような効果が示されています。
運動症状の改善:
筋固縮(筋肉のこわばり)の緩和: 筋肉の緊張をほぐし、動きやすさを改善する効果が期待されます。
振戦(ふるえ)の軽減: 一部の研究では振戦の緩和が報告されていますが、個人差があります。
歩行障害の改善: 歩幅が広がり、歩行速度が改善するなど、歩行能力の向上が見られる場合があります。すくみ足の改善にも効果が期待されます。
姿勢反射障害の改善: 体幹の傾きやバランスの改善に役立ち、転倒リスクの軽減につながることがあります。
非運動症状の改善:
痛みの緩和: 筋肉のこわばりや関節の痛みなど、付随する痛みを軽減します。
自律神経症状の改善: 起立性低血圧、便秘、睡眠障害(不眠など)といった自律神経の乱れからくる症状を整える効果が期待されます。
抑うつ症状の改善: 精神的な症状の緩和にも効果があるという報告があります。
仮面様顔貌の改善: 顔面の筋肉の緊張が和らぎ、表情が豊かになることが期待されます。
これらの効果は、薬物療法との併用によって相乗効果が期待できるとされています。鍼灸治療を併用することで、薬の効果がこれまで以上に出るようになったり、症状の進行を遅らせる可能性も示唆されています。
2. 鍼灸の作用機序
パーキンソン病に対する鍼灸治療の作用機序は、複数の観点から考えられています。
ドーパミン分泌の促進: 鍼灸の刺激が脳内の神経伝達物質、特にパーキンソン病で不足するドーパミンの分泌を促進する可能性が指摘されています。頭部への鍼治療(頭鍼療法)が脳の血流を改善し、黒質への刺激を通じてドーパミン生成を促すという研究報告もあります。
血流改善と筋緊張緩和: 鍼灸は局所の血流を改善し、硬くなった筋肉を和らげる効果があります。これにより、筋固縮やそれに伴う痛みを軽減します。
自律神経の調整: 鍼の刺激は自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスを整えます。これにより、便秘や起立性低血圧、不眠といった自律神経系の症状が改善されると考えられます。
脳への作用: 鍼治療は、高位中枢の反応性を正常化させ、その効果が持続する可能性が示されています。脳の活動性が向上し、運動機能の改善につながると考えられます。また、脊髄前角細胞の興奮性亢進を低下させ、脳への過剰出力に対する抑制効果があるという可能性も指摘されています。
3. 具体的な治療法とツボ
パーキンソン病の鍼灸治療は、患者さんの症状や進行度に合わせて個別にプランが立てられます。主な治療法には以下のようなものがあります。
頭鍼療法:
脳の血流を改善し、ドーパミンの分泌を促すことを目的とします。
「運動区」や「舞踏振顫区」といった、運動機能や振戦の抑制に関わる頭部のツボを刺激します。
YNSA(山元式新頭針療法)も用いた施術
体幹・四肢の治療:
筋固縮の治療: 首や肩、背中、手足など、こわばりの強い部位の筋肉を緩めるためのツボを使います。
姿勢・歩行の改善: 脊椎に沿ったツボや、下肢のツボ(例:足三里、太衝など)を刺激し、姿勢の歪みを整え、歩行能力の向上を目指します。
自律神経の調整: 腹部にあるツボ(例:天枢)や、全身の血行を促すツボ(例:血海)などを使い、便秘や冷え性などの症状を和らげます。
顔面の治療:
顔面の筋肉の固縮を改善し、仮面様顔貌や言語障害の緩和を図るために、顔面のツボに鍼をします。
治療は、一人ひとりの病態や症状の出方(弁証)に基づいて行われ、問診、脈診、舌診など東洋医学的な診断も併用されることがあります。
まとめ
パーキンソン病に対する鍼灸治療は、西洋医学の薬物療法に代わるものではありませんが、併用することで症状の緩和や生活の質の向上に有効であると考えられています。
特に、筋肉のこわばりや痛み、便秘、睡眠障害といった非運動症状の改善に効果が期待されています。
ただし、鍼灸治療の効果には個人差があり、すべての患者さんに同じ効果が保証されるわけではありません。治療を検討する際は、パーキンソン病の治療経験が豊富な鍼灸師に相談し、主治医とも連携して進めることが肝要です。
.png)



コメント